国東半島の神秘を体験!現代アートで巡る歴史と自然5選

アート

みなさま、「国東半島」をご存知ですか?

「大分県」と検索すると、別府や湯布院の他に国東半島とでてくるけど、
・何と読むの?
・どこにあるの?
・何が有名なの?
・おすすめのスポットはあるの?
・そもそも大分県って温泉以外何があるの?
など…の疑問がありますよね。

国東半島ってどんなところ?
と、調べてみてもよく分からない、どこに行けばいいのか分からない。
温泉以外の大分を知りたい…

そんなあなたに、この記事では国東半島についてご紹介します。

国東半島は「くにさきはんとう」と読みます。
1300年以上の歴史を刻む国東半島は、国宝にしていされている神社仏閣や石仏・石窟が多く点在しています。

これからご紹介する厳選した5つのアートを巡ることで、国東半島の歴史を知り、神秘的な体験や絶景に出会う旅をすることができますよ。

18年間国東半島で過ごしたものの、「何もない!」と思って都会へと飛び出した筆者。20年以上を都会ですごしたのちに国東半島のすばらしさを実感した私が、国東半島を体感できる場所をおすすめしていきます!

国東半島は大分県の北東部に位置する半島で、お椀を伏せたような丸い形をしており、国東市、豊後高田市、杵築市、日出町から構成されています。

国東半島の歴史は古く、718年、仁聞菩薩によって六郷満山が開かれ、神仏習合発祥の地として知られています。

六郷とは、国東半島の中心にある両子山から放射状に広がる、来縄、田染、伊美、国東、安岐、武蔵の6つの郷、満山とはそこにある寺院群のこと。

八幡神の生まれ変わりと言われる仁聞菩薩が国東半島に寺院を開いたことにより、この地に古くからある山岳信仰と大陸から伝わった仏教が融合した、神仏習合の「六郷満山文化」が栄えました。

旧正月に五穀豊穣や無病息災を祈る「修正鬼会」は六郷満山文化を代表する伝統行事で、重要無形民俗文化財にも指定されています。

また、六郷満山の僧侶が仁聞菩薩が修行した場所を辿る「峯入り」も10年に一度行われており、この峯入りのコースをベースに歩きやすいように構成された「国東半島峯道ロングトレイル」で体験することもできます。

国東半島は日本の秘境100選にも選ばれた、海と山に囲まれた豊かな自然と神仏習合の文化が残る神秘的な場所なのです。

国東半島のアート5選

アートを入り口に国東半島の素晴らしさを知ってもらう取り組みとして、2014年に「国東半島芸術祭」が開催されました。

国東半島芸術祭は「Life<生命、生きて活動すること、人生、存在>」をテーマにした、歩いて旅する芸術祭で、

①サイトスペシフィックプロジェクト
②レジデンスプロジェクト
③パフォーマンスプロジェクト

の3本柱で構成され、国内外のアーティストが参加しました。

国東半島芸術祭は終了しましたが、「サイトスペシフィックプロジェクト」の作品は現在も見ることができます。また、その後も少しずつアート作品が設置され続けています。

国東半島の歴史・文化や自然を体感することができるおすすめのアートを5つご紹介します!

国東半島芸術祭/千燈プロジェクト(サイトスペシフィックプロジェクト)
アントニー・ゴームリー【ANOTHER TIME XX】(2014年)


【ANOTHER TIME XX】が設置されている千燈地域は、六郷満山文化を開いた仁聞菩薩が最初にお寺を建てて修行し、入寂した地であり、国東半島の歴史・文化の中で重要な場所です。

アントニー・ゴームリーさんは自身の体を型取りして作る人体像で知られるイギリスの彫刻家で、インドやスリランカで3年間仏教を学んだことから、作品から東洋思想の影響が感じられます。人間の体を物体ではなく場所として考え、彫刻が置かれる空間までを作品とするのが作品の特徴です。

千燈プロジェクトでもゴームリーさんの特徴がよく表れています。
ゴームリーさんは実際に修験僧が歩く峯入りの道を歩いて、山頂付近で作品のイメージぴったりの岩場を見つけ、かつて国東半島で盛んだった「たたら製鉄」の歴史を踏まえて鉄製の自身の像を設置しました。

ちなみに…この作品の高和は191cm、重さは629g。これだけの大きさの彫刻を岩場に設置することは困難で、なかなか良い方法が見つからなかったが、地元の人々の知恵と協力でこの場所に設置することができたそうです。

ANOTHER TIME XXまでは2つのルートがあります。

①ゴームリーさんが実際にあるいた道を辿るルート
②短時間で辿り着けるルート

旧千燈寺跡の仁王像や鬼が一晩で運んだと言われている五輪塔群などの史跡をみることができる、
①ゴームリーさんが実際に歩いた道を辿るルートで、ANOTHER TIME XXを目指してみてください!(ただし、足場が悪い場所があるので、歩きやすい格好と靴で!)

ANOTHER TIME XXのゴームリー像の先に広がる雄大な自然に神秘を感じます。瀬戸内海も一望できますよ。


ANOTHER TIME XX
大分県国東市国見町千燈
大分空港から車で約47分
駐車場あり


縄文時代から続く岩壁に現れた現代の磨崖仏

国東半島芸術祭/成仏プロジェクト(サイトスペシフィックプロジェクト)
宮島達男【Hundred Life Houses】(2014年)

【Hundred Life Houses】のある成仏地区には、六郷満山文化を代表する伝統行事「修正鬼会」が開催される成仏寺があります。
この成仏寺の向かいには、縄文時代の土器・石器や人骨などが出土した成仏岩陰遺跡があり、縄文時代からある巨大な岩の絶壁に宮島達男さんは作品を設置しました。

宮島さんは「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」というコンセプトに基づいて、LEDのデジタル数字を用いた作品を多く手がける現代美術家。

全国にある磨崖仏のうち約6〜7割が大分県にあると言われています。
中でも国東半島には、火砕流の影響でできた岩場が多く、修行僧が掘った磨崖仏や石像が多く残されています。

宮島さんは成仏岩陰遺跡の高さ約16m、幅約30mの切り立った岩場に、コンクリート製の祠で囲われた100個のデジタルカウンターを設置し、「現代の磨崖仏」を目指しました。100個のデジタルカウンターは、地元住民やアートに興味のある若者、留学生らがワークショップでそれぞれが調整し、多くの人々と共に作られました。

設置されたそれぞれの祠の中では、赤黄青の3色のLEDライトによる1〜9までの数字が、それぞれの速さでカウントラウン、カウントアップを繰り返し、0になると暗転し再びカウントが始まります。

数字がカウントされている=「生きていく」こと
「0」=「死」

を意味し、輪廻転生を表現しています。

縄文時代から続く神秘的な場所で、歴史や様々な人生が繋がっていくことに想いを巡らせることができるのではないでしょうか。

この周辺も自然がとても豊かで、空気がとても澄んでいます。
晴れた日は自然を満喫できますが、Hundred Life Housesを見るなら、薄曇りの日の方がおすすめかもしれません。


Hundred Life Houses
大分県国東市国東町成仏 成仏岩陰遺跡入口
鑑賞可能時間:9:00〜18:00
大分空港から車で約47分
駐車場あり


日本の夕日百選・真玉海岸エリアの参加型デジタルアート

国東半島芸術祭/真玉プロジェクト(サイトスペシフィックプロジェクト)
チームラボ【花と人、コントロールできないけれども、ともに生きるーKunisaki Peninsula】(2014年)

プログラマ・エンジニア・建築家・Webデザイナーなど様々な分野の専門家から構成されるデジタルコンテンツ制作会社の「チームラボ」による、参加型デジタルアート作品。

真玉海岸近くの元縫製工場を使った映像インスタレーションで、1時間を通して国東半島の四季折々の花が移り変わっていきます。映し出される花に近づくと周囲に花が芽吹き、近づきすぎると花は枯れてしまいます。

国東半島芸術祭参加に向け、国東半島を訪れたチームラボ代表の猪子寿之が、国東半島で「自然」に対して感じたことを表現した作品です。

チームラボの作品から徒歩10分ほどのところには、日本の夕日百選にも選ばれた真玉海岸があります。

真玉海岸は大分県で唯一、水平線に沈む夕日を見ることができるスポット。
大分県は西側が山に面しているので、海に沈む夕陽が見える場所はとても貴重なのです。

また、江戸時代以降、他の海岸が新田開発で埋め立てられていく中、真玉海岸は良好な漁港のために開発されずにそのままの形が残されています。
干潮と日の入りの時間が重なると、干潟の縞模様が夕陽に照らされて浮かび上がり、幻想的な光景が広がります。

豊後高田市観光協会の公式サイトでは絶景の夕陽が見られるおすすめの日や、夕陽の撮影ポイントが紹介されているので、チェックしてみてください!
https://www.city.bungotakada.oita.jp/site/showanomachi/1462.html


チームラボギャラリー真玉海岸
大分県豊後高田市臼野4467-3
・開館時間
3月-10月:13:00~19:00(最終入場18:30)
11月-2月:13:00~18:00(最終入場17:30)

・休み
火・水・木曜日

・料金
一般(大学生以上):420円、小・中・高校生:270円
団体一般:340円、小・中・高校生:220円
未就学児:無料
障がい者割引:2割引(障がい者手帳を窓口でご提示ください。)

大分空港から車で約45分
駐車場あり


国東の海を一望!みんなで作り上げるアート

祇園山プロジェクト
島袋道浩【光る道ー階段のない参道】【首飾りー石を持って山に登る】(2021年)

国東半島芸術祭が終わった後も、アート作品は増えています。島袋道浩さんが国東半島に設置した4作品のうちの2作品をご紹介します。

国東市旭日地区の象徴でもある標高81mの祇園山に設置されたのは、島袋道浩さんの【光る道ー階段のない参道】【首飾りー石を持って山に登る】です。

島袋さんは兵庫県神戸市出身、現在は沖縄県那覇市在住の美術家。
1990年代初頭より国内外を旅して、そこに生きる人々の生活や文化から、コミュニケーションやアートのあり方に関する作品を制作しています。

祇園山は大分空港から車で10分ほどのところにあり、頂上からは広がる田畑や、豊後水道、瀬戸内海が一望できます。元日の初日の出スポットとしても有名です。

かつて、祇園山の頂上には八坂神社があったことから、祇園山の麓には鳥居があります。鳥居の先にある急斜面の坂道が旧八坂神社の参道で、島袋さんはこの参道に白い手すりを設置しました。

この手すりにはLEDライトが設置されていて、夜になると手すりが点灯し、山頂まで一筋の光が灯り、【光る道】となります。この道は着陸する飛行機からも確認することができるそう。(点灯時間は日没後〜22:00まで)

手すりを頼りに参道を登った先に現れるのが、【首飾りー石を持って山に登る】。
この場所には、世界各地の石や岩で作られた首飾りのような丸い形の広場があります。

この場所を訪れる人が石を持参して置いていくことで、育っていく作品です。
ぜひ、祇園山へ登る際には石を持って、作品作りに参加してみてください!


光る道ー階段のない参道
首飾りー石を持って山に登る

大分県国東市国東町綱井 祇園山
大分空港から車で約10分
駐車場あり


コンクリートで表現された地域のくらし

鶴川プロジェクト
レイチェル・ホワイトリード【Kunisaki House】(2022年)

国東半島の歴史・文化を感じられる場所や海岸線に沿った場所にアートが点在する中、最新のアートは国東市の中心部、鶴川地区にあります。

鶴川商店街の先に現れるのは、イギリスの現代彫刻家レイチェル・ホワイトリードさんによる日本初の常設作品【Kunisaki House】。

レイチェル・ホワイトリードさんは家具や扉、空間そのものを大分県コンクリートで型取りして可視化するアーティストで、Kunisaki Houseも同じ手法で古民家を再現しています。

Kunisaki House

「この作品は、国東市の中心部に当たる鶴川地区で、10年以上空き家となっていた民家の内部をコンクリートで型取ったものです。玄関や居間、神棚と仏壇が横並びになった座敷などを型取りすることで、この家の日常や地域特有の暮らし、そしてそこに存在していた空気や気配に形を与え、永遠にこの場所に留めようとしているかのようです」

この家が実際にあった場所で、障子や襖の取手など細部までくっきりと型取られて家の中が再現されていることがとても興味深い作品です。


私の家の神棚と仏壇も横並びになっていますが、子供の頃から当たり前すぎて、不思議に思ったことはありませんでした。Kunisaki Houseについて書かれたものを読んで初めて、当たり前と思っていた生活が神仏習合文化によるものだったということを知りました。こんなに身近に興味深い文化があるのに、目を向けようとしなかったことが恥ずかしい…!

Kunisaki Houseの周辺にある、国東半島の歴史を知ることができる場所もご紹介します。

Kunisaki Houseから徒歩5分ほどのところに、六郷満山霊場 第24番札所・興導寺があります。興導寺は959年に空也上人が開いた天台宗のお寺です。口から6体の阿弥陀仏が現れている空也上人像を教科書などでご存知の方も多いはず。

さらに興導寺から歩いてすぐの場所には古興導寺跡と言われる空也池があります。

石橋を渡ると空也上人のお墓があり、この池では心の断捨離ができるとも言われています。

私が初めてKunisaki Houseを見たのは、設置されて数ヶ月後の帰省した時でした。

面白い作品だと思いつつも、子供の頃から慣れ親しんだ場所なので「どうしてここに作ったの?」が正直な感想でしたが、こうして地域の歴史や残していきたい文化を知って納得。子供の頃の記憶や思い出もよみがえります。

近年、Kunisaki House周辺は人口減少が進んで空き家が増えていますが、空き家を活用して絵本中心の本屋さんや食堂がオープンし、少しずつ賑やかになってきました。

また、Kunisaki Houseの向かいには築100年以上の古民家を改修した「鶴川商店街周辺観光・交流拠点施設」がオープンしました。

コワーキングスペースのほか、飲食や物販などのチャレンジショップや作家の方の作品展示、落語会なども開催されています。

施設には、棚の扉や引き出しを開けると国東にまつわる音が流れてくる「図音館」もあり、音を楽しみながら国東を体験することができて、おすすめです!

Kunisaki Houseや鶴川商店街周辺観光・交流拠点施設の周辺はのんびりとした時間が流れています。季節の空気を感じながら散策ができるので、ぜひ一度訪れてみてください!


Kunisaki House
大分県国東市国東町鶴川
大分空港から車で約15分
駐車場あり


まとめ

国東半島芸術祭が開催されていたこと、サイトスペシフィックプロジェクトのうちのいくつかの作品も知っていましたが、私が育った場所からはやや遠く、当時はそれほど興味は持っていませんでした。

2022年に子供の頃から慣れ親しんだ場所に「Kunisaki House」が設置されたことをきっかけに、少しずつ「国東半島」に興味が湧いて、その歴史を調べていく中で、「何もない」と子供の頃から思っていた国東半島の魅力にようやく気づくことができました。

国東半島芸術祭からスタートしたアート作品があるのは、公共交通機関よりも車移動の方がスムーズで、決して便利な場所ではありません。しかし、時間をかけて辿り着いた先に広がるのは、それまでの疲れを吹き飛ばしてくれるほどの絶景です。

また、それぞれのアート作品は完成までもそうですが、設置された後も綺麗に保たれていて、地域の人々と共に作られ、地域の人々に大切にされていることを実感できます。訪れた人を温かく迎えてくれるのは国東半島だからこそではないかと思います。

今回ご紹介した以外にも国東半島はアート作品が設置されています。
チームラボ真玉ギャラリーからも近い、香々地プロジェクトのある長崎鼻は、菜の花、ひまわり、コスモスと四季折々の花が彩ります。また、国東半島には雪が積もる地域もあり、季節によって変化する風景とアートの融合を楽しむことができるので、ぜひ何度も国東半島を体験していただきたいです!

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